以前、とあるラーメン屋さんに入った時のことです。
 
カウンターに並ぶメニューの横に、「店主からのメッセージ」がありました。
そこには店舗開業までの想いや、店名に込めた意味などが綴られており、最後に、

 

「皆様に愛される店を目指していきたい」

 

というようなことが書かれていました。

 

私は、一人の客として、
そして勿論ショップビジネスに関わるコンサルタントとしても、

どうしてもここに違和感を覚えてしまったのです。

 

 

 

お客さんへの配慮はこういうところにも表れる

そのお店には、その時点でもう何度も足を運んでいました。
つけ麺が、とてもとても美味しくて、好きなのです。
お店のスタッフの方々も、まだ30代であろう若い大将を含め、
とても愛想がよくて素敵な方々です。

 

ですから、そのお店に行くことでの「満足」はありました。
少なくとも、同じラーメンなら、
近くのチェーン店で中国人スタッフの「作業」感丸出しの接客を受けるより100倍いいですし、
そのお店の味噌つけ麺の味噌が絶品なのです。

ちょっと割高でも、行く価値はあると感じていました。

 

 

 

しかし・・・・言ってしまえば、それだけなのです。

 

支払った対価に見合うものは提供されていると思えるから、
「満足」はするんですけれども、そこで終わってしまいます。

つけ麺は十二分においしいのに、どうしてかなと、
帰り道にふと考えてみました。

 

 

 

 

すると・・・・

満足しているはずなのに不思議ですが、
そのお店の良かったところではなく、
ちょっと気になる部分ばかりが、思い返されてきたのです。

 

 

 

例えば、ティッシュの箱の置き場

 

食事中は、手や口を拭きたくなることが多々ありますし、
多くのラーメン店で、ティッシュの箱を置いています。

ティッシュでなくても、おしぼりとかそういうものを用意しているのが常です。

しかし、そのお店では・・・・L字型のカウンターの、角の部分にしか置かれていません。

そのため、カウンターの隅に座ると、
わざわざ立って取りに行かなくてはいけないのです。

それどころか、給水機の陰に隠れて、
初めて来たお客さんはほとんど気付けません。

 

正直ちょっと、面倒くさいなと思ってしまいました。

 

 

 

 

例えば、声をかけるタイミング

 

食券機の前に立ってお金を入れていると、
「食券を買われましたらこちらのお席にどうぞ」
と、背中側から声がしました。
  
私の意識は、何を買おうかと考えて食券機に向かっていたので、
最初は何を言われたか分からず、
振り返って、「はい?」と聞き返してしまいました。

私の後に来たお客さんも同様に、
食券機の前に立ったタイミングでそれを言われていました。


その方は、「こちらのお席にどうぞ」の部分しか耳に入ってこなかったようで、
「え、食券買わなくていいんですか?」って聞き返していました。

 

 

 

なぜこんな些細なことにお店側は気付かないのか

そういうレベルの、ことなのですが。
  
どちらの事例も、つまりは、
「お客さんのことを本当にしっかり見てはいない」
ということを示しています。

  
単純なことのはずなのです。

 

 

「ラーメン食べていたらティッシュが欲しくなるよね、汁が飛んだりするし」

「よし、じゃあお客さんが自分でティッシュを取れるようにしよう」

 

という理由でティッシュを置くのですから・・・・
取りにくい場所にあったら、意味がないのです。

「ティッシュが必要とされるだろうから置いておけばいい」
という短絡的な思考になってしまって、根本的な部分を見落としています。

  
取りにくい・取れない場所に置くなら、
置いていないも同然なのです。

 

 

 

声かけの件についても、そうです。

 

店員さん、あなたが声かけたその時、
そのお客さんは、何をしていますか?

 

その人は、メニューを選んでいるのです。
そして、買おうとしてくれているのです。

あなたがしている行為は、
お客さんの時間に割って入ることであり、「サービス」ではありません。

 

席への誘導は大切ですよね、もちろん。
そんなに広くないカウンター席のお店なら、効率よく座ってもらうことが重要です。

でも、その声かけ、「食券を買い終わった後」では、ダメなんですか?

必ず、「食券を買ってる途中」で声をかけますよね?

 

忙しい時なら仕方ないかもしれませんが・・・・
ほぼ毎回、声をかけたらその後、
結局、お客さんが買い終わるまで待ってるじゃないですか。

あなたの声掛けに、お客さんが反応できていません。
お客さんの反応を、ずっとお客さんの後ろで待ってる時間、無駄じゃないですか?

 

だったら、後ろ姿に声をかけるのではなく、
「食券を買い終わったタイミング」で、
お客さんが振り向いた時に、
正面から声をかけてあげた方がいい
じゃないですか。

  
あなたの言葉の内容もちゃんと届くし、お客さんだってその方が喜びます。

 

 

 

 

これらは、どちらも、些細なことです。

売上げにそこまで大きなマイナス影響を与えているとは、私も考えてはおりません。

味は確かですし、そもそも店員さんの愛想は良くて気持ちいいですし。

 

 

けれども・・・・

店員さんは、
「マニュアル通りの接客」をしているだけで、
もっと本質的な部分で、
「お客さんのことを考える」というのが出来ていない
感じがします。

 

 

お客さんの利便性をとことん追求できていないから、
置くべき場所に必要なものを置けていないのだし、
お客さんが今どういう気持ちかちゃんと観察できていないから、
店員さん側のペースで声をかけてしまうのです。

 

 

これは、商売の本質から言ったら、とても残念なことです。

 

 

 

 

お客さんに愛されることを望む前にお店側がやるべきこと

こういう残念なことに気付いた時、
ふと、冒頭に書いた、あのフレーズを思い出しました。

 

「皆様に愛される店を目指していきたい」

 

 

 

 

あぁ・・・・
そうか・・・・
  
そういうことか・・・・
  
最初はこの言葉を、特に気にも留めませんでした。
このお店に限らず、というかお店に限らず色んな場面で、
「皆様に愛されるように」みたいなフレーズ聞きますからね。

 

しかし、どうしても拭えなかった違和感の正体は、ここにありました。

 
私は、こうしたお店側の言葉に対して、
今はこう返したくなります。

 

 

 

「あなた自身はお客さんを愛さないんですか?」

 

 

と。

愛されたい、愛されたいとだけ叫ぶ営業なんて、とても哀しい。

 

 

「愛される」というのは、『結果』なのです。

 

 

お客さんを愛し、お客さんに喜ばれるお店が、
その結果、「愛されるお店」になるだけです。


その本質を理解せずに、
「お客さんから愛されるお店」ばかりを目指していたら・・・・
それは、難しいんじゃないでしょうか。

 

 

・・・・おそらく、もっと言えば、
この言葉の裏にはやはり、「愛されたい欲求」があります。

相手を見ることよりもまず、自分を見てもらいたい願望が強いのです。

それはすなわちお店で言えば、

「サービス」を無視し、ただ物を作って売るだけの、
お客さんよりお店側の都合を主軸に置いた営業

ということになります。

 

 

勿論、「お客さんのことを考えていないのか」と聞けば、
まず間違いなく「いやちゃんと考えてる!」と多くの人が仰ると思います。

  
ですから、こういうことは、「無意識」なのです。

 

しかしながら・・・・
その無意識の部分が、
ティッシュや声かけの件として、
少しずつ表面化してきています。

 

 

そして、こうしたお店は、何が怖いかというと・・・・

「お店がうまくいかなくなってきた時、
その問題をお客さんに求めてしまう」

という部分です。
自分たちは一生懸命やっているのにお客さんが理解してくれない、というような。

そんなふうには、なってほしくないですね。

 

 

 

ラーメン店が本当に売っているものは何なのか

ただ、こういうことは、自分で気付くしか、ないのです。

ああした方がいい、こうした方がいいというのは、
第三者から言われても分からないものです。

 

私たちができるギリギリの手助けがあるとすれば・・・・
ただひとりのお客さんの意見として、伝えてあげることくらいでしょう。

「ティッシュが取りづらいので、置く場所を増やしていただけたら嬉しいです」
「食券を買ってる最中に話しかけられると、何を言われているか分かりません」

などなど。

 

 

 

 

ラーメン店の商品は、『ラーメン』では、ありません。

ラーメンを売っているわけではないのです。

そこを勘違いしてしまうと、色んなものが変わってきます。

 

 

 

 

 

ラーメン店の本当の商品は、
『ラーメンを食べる時間と空間』です。

 

 

ラーメンそのもののみならず、
そのための時間と空間、
つまり『お店そのもの』が商品なのです。

「ラーメン1杯」の価格の中には、それらも全部含まれています。

 

 

 

ラーメン店に限らず、ショップビジネス全般に言えることです。

自店の商品が一体「何」なのか。

それをしっかり踏まえた上で、ちゃんと、
お客さんのことを考える営業をしてもらえたらなと、思います。

 
 

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