お店や看板が、お客さんとなる人たちから「見えている」かどうかを判定する時、
立地判定や売上予測の世界では、非常に厳しい基準を設けるという話は、
今までに何度かさせていただきました。

 

今回は、そのことについてさらに詳しく書きます。

 

 

お店が「見えている」と言える状態とは

普通、「見えている」って言ったら、どんな状態を思い浮かべますか?

 

おそらく、
 
「障害物が何も無くて(物理的に)目で直接見ることが可能である」
 
というのが一般的でしょう。
つまりは、
 
「遮るものが何も無い=見えている」
 
という考え方です。

 

勿論、これは基本中の基本で、非常に大切なことです。
障害物があってお店や看板が見えないのでは、話になりません。
 
なので、しっかり見える位置に看板を設置しなければならないということは、
多くの人が考えることですし、見落とすこともあまりありません。

 

しかし・・・・
実は、脳科学的に人間の「目で見る」という知覚のメカニズムを考えた時、
「見えているのに見えていない」という現象が、多発するのです。
 
そうしたメカニズムを考慮して、立地判定の上では、
大きく分けて4つの「見えていない理由」について検討し、
それらの全てをクリアしたお店や看板を、「見えている」と判定します。

 

 

4つの「見えていない」状態

その4つとは、
 
「視界障害」
「視界融合」
「視界退行」
「視界縮小」

 
のことです。

 

 

先程の、「遮るものが何もない」というのは、これらのうち、
「視界障害」についてはクリアした、ということになります。

 

ですが・・・・それだけでは、十分に「見える」とは言えません。
「視界障害が無い」というのは序の口の話であって、
まだ他に3段階ものチェックをしなければ、「見えている」ということにはならないのです。

 
そして、その3つは、「物理的には見ることが可能」であるため、
立地判定に慣れていないと、見落としてしまうこともよくあります。

物理的に見えるかどうかの話ではなく、
「脳がそのお店や看板を『見えている』と認識しているかどうか」
という、非常に繊細な判定だからです。

 

 

今回は、これらのうち、「視界融合」という現象について、簡単にお話します。

 

 

 

実際に発生している「視界融合」の事例

これは、とりわけ個人のお客さんは陥りやすい落とし穴ですね。
 
けれども、理解はしやすいロジックです。
 
ズバリ、この写真のような状況が良い事例となります。

視界融合の事例1_新宿

お分かりになりますでしょうか?
 
つまり、
「沢山の看板がありすぎてごちゃごちゃしており、
ひとつひとつをピンポイントで認識しにくい」

という状況のことです。

 

これはまだ写真ですから、落ち着いて見れば、
ひとつひとつの看板を認識することはできるでしょう。

 
しかし、これが実際の街で、歩きながらだったらどうですか?
・・・・確実に、無理です。
 
試しに、例えば新宿などの街を10分ほど歩いてみて、
「記憶に残った看板」を挙げてみてください。

おそらく、ほとんど覚えていないことが分かります。

物理的には、視界に入ってきているはずなんですが、
それを人間の脳は、「見えている」と知覚しない
のです。

このロジックについてより詳しく学術的に知りたい方は、
「ゲシュタルト心理学」で調べてみてください。
よく、「ゲシュタルト崩壊」とか言ったりしますよね。
その話と密接に繋がっています。

 

 

 

他にも例えば、ロードサイドでのこのようなケースもあります。

融合看板群inロードサイド

見事に、全体的に赤と白の看板ばかり!!
車を運転中に、どれかひとつの看板を、強烈に認識するなんて、無理ですよね。

「なんとなく、赤と白の看板がいっぱいあった」
としか、脳は捉えません。
 
そうなってしまったら、それぞれのお店としては、
看板を出している意味が無いわけです。

 

 

それから、こういうケースもあります。

融合看板群inロードサイド2

左手に、「堀産婦人科」「高橋小児科」「仙石ミシン」など、
色々文字が書いてある看板がありますが・・・・

 
人間の脳は、
「なんか文字がいっぱい書いてあった」
としか捉えません。

 

看板を出している側にしてみれば、この看板を出すことで、
自分のお店(ここではクリニック)に来てほしいわけですよね。

しかしながら実際には、全然認識すらしてもらえていないのです。
 
これでは、意味がまったくありません。
(さらに、こんな意味の無い看板に設置料を払っていたら、お金の無駄です!)

 

 

 

さらには、街中でよく見かけるこうした「共同看板」も、
同じ理由で、設置している意味が薄いと言わざるをえません。

視界融合を起こす共同看板1

視界融合を起こす共同看板2

まぁ、現実的なことを鑑みれば、駅前などは雑居ビルが多いことから、
どうしてもこういうパターンが多く起きてしまいがちではあると思います。

それに、看板の用途は「お店を見つけてもらう」ということだけではないので・・・・
全くの無駄かと言うと、そうとも言い切れない場合もあります。

 
けれども、こうして「視界融合」を引き起こすような看板では、
効率が悪いということはまず間違いありません。

看板があることによる直接的な集客効果は、全然望めないわけですから。

 

 

 

とはいえ、実際、こうした看板を出して、

「看板は出しているんだから、通行人にお店は見えているはずだ」

と勘違いをしている経営者は、多く見受けられます。

それは、(ケースバイケースではありますが)間違いかもしれません。
経営者は「自分の店という愛着」がありますから、沢山ある看板の中からでも、 
自店の看板を認識することは当然できるでしょう。

しかし、お店に来てくれるお客さんは、そこまで意識していない人がほとんどです。
こうした看板では、その人たちの目に入っても、「認識」はしてもらえません。

 

 

「視界融合」が発生する知覚のメカニズム

ちょっと小難しい話をしましょう。

 

下の図を見てください。

人間は「個」でなく「まとまり」で知覚する
 
これを見て瞬時に、ひとつひとつの緑色の四角の数を数えた人という方、いらっしゃいますか?
ほぼ全ての四角が、大きさがそれぞれ違うのですが、その違いまで完璧に認識できたという方、いらっしゃいますか?

 

 

・・・・いらっしゃったとしたら、その方は、脳の病気です。

 

ほぼ全ての人は、
 
「なんとなく緑の四角がいっぱいある」
 
というような、漠然とした捉え方をしたのではないでしょうか。

 

 

 

そういうことなのです。
 
人間の目は、ひとつひとつの「個」ではなく、
「まとまり」で知覚する
というメカニズムを持っているのです。
 
そのため、似たようなものがいっぱいあると、そのひとつひとつではなく、
「なんとなく似たようなのがいっぱいある」という捉え方をしてしまいます。
 
個々の物体それぞれが、微妙に大きさや形が違えども、
全体的に似通っていれば、そのひとつひとつをすぐには知覚できないのです。

 

 

このメカニズムが、「ゲシュタルト心理学」であり、「視界融合」の原理です。

 

 

 

ちなみに、先程の図を、以下のようにしてみると・・・・

なんとなく3つの「まとまり」がある
 
「なんとなく緑の四角が、3カタマリある」
と認識するはずです。

 

 

 

また、このようにするとどうでしょうか。

人間はまとまらないものを知覚する

「なんとなく緑の四角がいっぱいある中に、ピンクの四角が1コある」
と思えませんか?
 
人間の脳は、「まとまり」で知覚するという性質がある一方で、
「まとまらないもの」を知覚するという性質も持っているのです。

ですから、似たようなものの中にひとつだけ全然違うものがあると、
それが目について仕方なくなってしまいます。

 

 

 

「視界融合」を解消するためには

このようにして知覚のメカニズムから紐解いていく、
「視界融合」の解消の仕方も、イメージが湧くでしょう。

 
自分のお店の看板を、周辺の景色や他のお店の看板と、
「ひとつにまとまらない」ものにすればいい
のです。

 

周りに赤い看板が多かったら、自分のお店は青い看板にしてみるとか。
周りに四角い看板□が多かったら、自分のお店は丸○や星型☆にしてみるとか。
 
そういうことです。

 

 

「形」と「色」、どちらか一方もしくは両方を、『目立つ』ものにすること。
 
これが、非常に重要な看板の戦略です。

 

 

 

 

とはいえ、しかし・・・・現実的には、難しいことも多いと思います。
 
例えば、下の図を見てください。

結局人間はまとまりで知覚する
 
さっきより、色を変えた部分を増やしてみました。
 
すると・・・・
「なんとなく緑の四角がいっぱいある中に、
なんとなくいくつか色が変わった部分がある」

というように、また漠然とした認識になってしまいます。
 
何色の四角がいくつあるかなんて、意識しなければひとつずつ数えようとはしません。
「色が変わった部分」というように、結局は「まとまり」で認識されてしまうのです。

 

 

 

例えば、街でこのような看板たちを見かけた時・・・・

変な看板が沢山ある

私たちの脳は、
「なんとなく奇抜な看板がいっぱいあった」
というように、「まとまり」で知覚してしまいます。

 

この写真の看板は、ひとつひとつのデザインをよく見てみれば、
いずれも互いに「まとまり」にならないよう、
目立たせようと努力しているのが伺えます。

置いてある場所が違えば、「目立つ」看板に成り得たかもしれません。

しかしながら、このように、同じく奇抜な看板たちの中に一緒くたに入ってしまうと、
ひとつひとつが持っているはずの良さも、薄れてしまいますね。

 

 

このように、「どんな看板なら視界融合を緩和できるのか?」ということについては、
その看板を設置する周囲の景色次第なのです。

青系統が多い景色にあっては、赤い看板を作ったり、
四角い看板が多い街の中では、星形の看板を作ったり、
様々な形の看板がひしめいている中では、とりわけサイズが大きい看板を作ったり。

というようにです。

一辺倒に、「白地に赤なら目立ちやすい」とか、そういった話ではありません。

 

 

 

「視界融合」が発生しているだけで不振店にもなる

こういった、「視界融合」が発生している状況が、街には溢れています。
 
そして、「視界融合」が起きやすい立地というのは、
それだけで大きなマイナスポイント
に成り得るのです。

 

冒頭の方に書きましたように、障害物がある、というなら分かりやすいのですが、
「視界融合」は見落とされやすいものです。

 
しかしながら、お店がなかなか繁盛しないような「悪い立地」の例に、
ちょくちょく共通して挙がってくる「明確な」マイナスポイントです。

 

 

こういったところにもしっかり注意を払わなければ、
「良い立地」とは、見つからないものです。

それどころか、

「人通りはあるし、障害物が無いんだから良い立地だ!」と過信して、
実は利益の出ない「貧乏立地」に出店してしまった・・・・

ということにもなりかねません。

よくよく、注意して出店するようにしてください。

 

 

物理的には見ることが可能かもしれない、そのお店や看板・・・・

 

本当に、本当に、
お客さんから「見えている」と思いますか?

 

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事