AIだけがあっても売上予測はできません

ショップビジネス業界における、昨今の大きな問題のひとつとして、
「AIがあれば売上予測ができる」という大きな誤解が蔓延していることが挙げられます。

 

多くの人が勘違いしていますが、AIとは、「高精度な計算をするシステム」のことです。
AI自らが、計算するための「式」を構築することはできません。

売上予測モデルの重要ポイントは、「どういう計算式を作るか」というところであり、
この作業は、絶対に人間じゃないとできないものなのです。
  
なぜならばAIは、自律歩行して街を実査したり、
五感で感じ取った状況を数値化したりすることはできないからです。

 

 

 

AIは、どうやら確かに高度な学習機能があって、
そういう意味では、人よりも高精度な分析をできるとは思います。
  
けれども・・・・
料理で言えば、AIは、「自分で食材を調達には行けない」わけです。
  
目の前に並べられた食材から、最も適した料理を作ることは、
もしかしたらできるのかもしれません。
けれども、腐った食材を並べられてしまえば、
たとえAIでも、おいしい料理は作れませんよね。
  
それと同じで、「分析するためのデータ集め」は、人間にしかできないことなのです。

 

 

 

このことは、ちゃんと売上予測のための重回帰分析をやっている人間なら、
肌感覚で当然理解できるものです。
「これは、AIを導入すればできるものではない」と。
 
しかしながら・・・・
そもそも重回帰の何たるか、売上予測の何たるかを知らない人には、
なかなか理解してもらうのは本当に難しいことですし、むしろ、無理かもしれません。
  
AIですべてを解決できると妄信している人たちは、
「データ集め」「計算式作り」の困難さを、実感できていないのだと思います。

 

そもそも、現在のAIは、「動けない」のですから、
それだけでも、AIには売上予測をすることが不可能なことは分かりそうなものです。
実査に行かなければ、「街の様子」を感じることはできないのですから
人間は、五感を働かせて生きているわけですが、
実際に現地に行って、自分も五感で感じ取らないと、
「お客さんはどんなことを感じているか」が分からないのですから。

 

 

 

 

ただ、勿論、とりあえずデータを適当にでも取って、
片っ端からAIに学習させれば、一応「それっぽい」ものはできあがるでしょう。
  
けれども、その「それっぽい」ものの精度はいかほどのものか、という問題があります。
  
適当なデータしか入れてないのだったら、いかにAIといえど、
適当な分析、適当な売上予測しかしてくれないのは当然です。

人間と違って、悪い意味でも「忖度」しませんので、
普通に人間の感覚で言ったら明らかにおかしな数値でも、
AIは、それを誰かが定義してくれるまで、おかしな分析をし続けます。

 

 

 

 

現在私が受け持っているコンサルティングにおいても・・・・
  
分析をしていて、実査してある店舗と、まだしていない店舗との、
データのズレが全然違いました。
実査済みの店舗は、ほとんどもうピタリ合っていましたけれど、
未実査の店舗はまだまだ予測と実績の乖離が大きかったものです。

ですから、いかにちゃんと実査をし、
いかにその結果を数値化して分析に反映させるかが、
売上予測モデルの精度の肝を担うわけです。

 

 

 

信じる、信じないではなく、それが現実。
やっている人にだけ見える真実の風景。

 

 

なのですが・・・・

 

 

 

 

どうしたものかと、いつも頭を抱えてしまいます。
  
AIを導入するなとは言いませんし、すべて無駄とも言いません。
AIがあることで、さらに売上予測の精度を高めることはできるからです。
色んな複雑な計算をすることができるようになりますから。

 

 

重要なことは、AI「だけ」では、売上予測はできないということです。

お店で言い換えれば、
「看板があれば売上げはアップするけど、
看板があっても肝心のお店が無かったら、
そもそも売上げが発生することもない」
ということです。
  
AIはあくまで、「サポートツール」なのだということであり、
立地をちゃんと見抜ける人間、その人材そのものが「本体」なのです。

 

 

 

ですから、それを思えば、別にAIは無くても売上予測はできるとも言えます。
柔軟な考え方と、発想力と、エクセルを使う技術があれば、かなり高精度なものが作れるのです。

実際に、20数年間のコンサルティングの中では、
ずっとそうやって高精度な売上予測モデルを、
人の手で作ってきたわけですから。

 

 

 

 

 

 

こういったことは・・・・どうしたら、伝わっていくのでしょうか。
  
AIが無くても、多分AIを導入するよりよっぽど安い金額で、
AIよりも高精度な売上予測を、作れるものなのですが。
  
それでも、AIの方が精度が高そうな気がしてきてしまうのですね。
多くの方々が、その本質を理解しないまま、
「AI」という流行りの言葉の雰囲気に流されて、
盲目的に導入してしまうことが多いようなのです。

 

 

 

 

かつてのGISブームの二の舞

20年ほど前、「GIS」が世に出回り始めた頃と、
状況がよく似ているんじゃなかろうかと思います。
(その当時は私はこの仕事していませんから、
伝え聞いた話でしかないのですが)
  
「GIS」とは、人口とかそういう統計データを集計するソフトですね。
お店の周りにどれくらい人が住んでるのか、など、
そういったデータを大量に搭載していて、瞬時に出せるシステムです。

 

きわめて高価なシステムであるにも関わらず、
ある時期、多くの企業がみんなこぞってGISを買って、
「うちは高いGISを買ったので売上予測は万全です」
みたいなことを言っていたことがありました。
  
本質的には、まったく違うのにも関わらず。 
GISで集計したデータから、どういう分析をするかが、
本質的なポイントであるにも関わらず、です。

 

 

 

そして、結局GISのブームは、数年で過ぎ去りました。
  
みんな口々に、
「予測が当たらない」
「それならこんなもの導入しても意味が無い」
というようなことを、吐き捨てるように言いながら。

 

それは、まったくの誤解なのですが・・・・

 

予測が当たらなかったのは、導入したGISを使いこなせる人材がいなかったからです。
「GISさえあれば大丈夫」と誤った認識をして、分析ができる人間を育てなかったからです。
  
GISは確かに、今や売上予測に必要不可欠なものにはなりましたけれども・・・・
でも、そんなに高価なもの(数十万~数百万が当時のスタンダード)を買わなくても、
月額1万円以内のもので十分に良いデータは取れます。
  
そして、ちゃんと分析者の腕があれば、
その安く手に入れたデータを使って、高精度な売上予測はできるものだったのです。

 

 

「そんな高価なGISを導入したって、分析する人間がボンクラじゃ、宝の持ち腐れですよ」
「そこまでしなくても、安いものを導入して、その分、人材を育てた方が精度は高まりますよ」
  
と、私たちがいかに熱弁しようとも、
  
「これからの時代はGISだろう」
  
と言って聞かなかった企業たちは、結局、GISすら使いこなせていません。
店舗開発マンの「おもちゃ」と化している企業も多いというのが事実です。
 
 
ソルブでも、業界で「トップクラスに安い」GISを開発して販売していますが・・・・
それの営業を、私がまだ会社員だった頃はしていましたが、
「導入したけど、結局役に立たなかったんだよね」
と言われることがよくありました。
  
いやいや、GISを使いこなせなかっただけでしょ。
あんなの、ただ「周辺データを取るだけ」のシステムなのに、
「取ったデータをどう分析するか」を考えなかったから、ダメだったんでしょうに、
と言いたくなることばかりでした。

 

 

 

 

GISを役立てられなかった人々がまたAIに飛びつこうとしている

今、そのいつぞやのGISのケースと同じように、
  
「これからの時代はAIだろう」
 
と、多方面で言われています。
 
・・・・何とも、既視感のある光景です。

 

 

AIなんて、「ただ分析をするだけ」のシステムなのに、です。
  
どんなデータを分析させるか、その取捨選択をしたり、
どういう方向性で分析をさせるか、その切り口を考えたり、
そういった分析における重要な本質は、
どんなにAIが出回っても、ずっと人間の役目であることは変わりません。
  
いつの日か、自律行動する人間型のロボットまで進化しない限り、
見た目や動きからじゃロボットと判断できないくらい高性能なAIが生まれでもしない限り、
  
「人間の気持ちは人間にしか分からない」
 
のですから。

 

 

 

AIに縋る企業がショップビジネス業界を衰退させる

ショップビジネスのお客さんは、「人間」です。
  
お客さんの気持ちは、「人間」が受け止めなければいけません。

 

人間の心を持った人間が、取るデータの内容を決め、分析の方向性を決めるのです。

そのデータはGISで取ればいいし、
取ったデータを分析するのはAIにやらせればいいかもしれません。

 

 

AIが、料理を「創作」できたりはしないでしょう。
  
「何を作るか」を決めるのは、いつだって人間です。
  
何を作るかを決め、そのための食材を集めるところまでちゃんと人間がやったなら、
もし、「高性能AI料理マシン」みたいなのがあれば、
もしかしたら、任せてもいいのかもしれませんよ。

 

 

それと、まったく同じことなのです。

 

十数年前、GISを闇雲に導入して得意満面になっていた企業の多くが、
結局ちゃんとした立地調査・売上予測ノウハウを構築できなかったように、
  
今も、AIに踊らされているだけの企業が、
本当の意味でそれをショップビジネスの発展に活用することなんて、
きっとできないだろうと思います。

 

 

 

 

きっと数年したら、
「どうせAIも当たらない」
と言われる日が来るのではないでしょうか。
  
最悪なのは・・・・それが、
「売上予測なんか当たらない」
と、責任転嫁されてしまうことです。

 

 

GISの時代にも、そういうことがありました。
 
GISのデータが悪いわけじゃなく、分析する人間がポンコツだっただけなのに、
そのせいで売上予測が当たらず損害を被った企業は、
  
「結局、売上予測なんか当たらないじゃないか」
  
と吐き捨てたのですから。

 

そういうポンコツが、売上予測の大切さを地に貶めたせいで、
私たちもその風評被害を受けた実感があります。
どうせ当たらないでしょと言われ続け、でもそれを覆すのも、
専門領域の話ですから、理解してもらうのが難しくて、すごく苦労しています。
  
そして、どんどん、ちゃんとした立地調査や売上予測をやらない企業が増えていきました。
 
そうやって、ショップビジネス業界はどんどん不況に陥っていったわけです。

 

 

 

 

 

これからも、そういうことになる気がしてなりません。
 
「高い金払ってAIを導入したのに、結局使えないじゃないか」
 
と、ますます立地や売上予測に、企業が意識を払わなくなるかもしれません。
 
そして、そういうAI妄信企業の方々は、
  
「AIでも出来なかったんだから人間のコンサルなんかにできるはずがない」
 
と、決して、AIの使い方を誤った自分たちのせいだとは認めないでしょう。

 

 

 

 

ショップビジネスは、確かに、ネットの発達によって、
いくらか難しい状況にはなっているかもしれません。
  
でも、人間、みんな引きこもりになるわけじゃないのです。
  
「必要だから買う」ではなく、「楽しんで買う」という心は、
いつまでも人間の中には残されていて、それがある限り、
ショップビジネス自体が無くなることはありません。
  
それに、ネットがいくら発達したって、ネットで食事ができるわけじゃないのですから。
(食品の輸送はできても、「食事」という行為はできない)
  
「モノ」を売っているわけじゃなく、
「買い物」や「食事」という「コト(=行為)」を売っていると捉えたら、
いくらでもまだまだ、ショップビジネスには繁栄の余地があります。

 

 

けれども、その大前提として、
「物理的にお店にアクセスしなければならない」
というものがある以上、「立地」を無視して、お店が繁盛することは有り得ません。
  
お客さんにとって、来店しやすい場所に出店してあげること。
多くの人が便利だと感じられる場所に出店してあげること。
  
お店にとっての「立地」とは、
「お店がお客さんにできる1番最初のサービス」なのです。

 

 

 

AIだなんだと、そういう流れに踊らされている人たちは、
なかなかどうして、そういうことを忘れがちなのではないでしょうか。
  
かつて、多くの人がGISに対してもそうだったように、
自分の無知から勝手にAIに期待し、その期待が裏切られたら、
そもそもAIが悪かったかのように捉えて、自分の未熟さを省みない・・・・
  
そういうことになれば、またも、ショップビジネス業界は、衰退する一方です。

 

 

 

 

AIだけじゃ、売上予測はできません。立地判定はできません。
  
それを使う「人間」の技術を、センスを育てて、初めて精度高くできるものです。

 

 

 

こういうことを、もっと伝えていきたいのですが・・・・
どうにも、難しいことですね。

 

みんながこぞってAIの流れになってくると、
どうにも私たちは、「AIこそ至上」の思い込みを覆すことができず、
力不足を痛感する日々です。
  

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