オフィス街風景01

よく、就業者のランチ需要を狙う飲食店が、
オフィス街への出店を希望することがあります。

確かに、いわゆるオフィス街と呼ばれるようなエリアは、
多くの高層ビルが並んでいたり、
通勤時間帯やランチタイムには多くの就業者が道に溢れ、
きわめてビジネスチャンスが多そうに見えることでしょう。

しかしながら実際は、そうしたエリアでの出店は、
圧倒的に失敗するリスクの方が大きい
のです。

今回は、その理由について、解説していきます。

 

オフィス街風景02

「オフィス性向の強いエリア」とはどのようなところか

まず、働きに来る人(就業者)が、
そこの居住者より圧倒的に多い地域を、

「オフィス性向」の強いエリア

という呼び方をします。

統計データを用いて表現するなら、
昼間人口が夜間人口の5倍~20倍ほどになるエリア
のことです。

こうしたエリアには、次の5つのような特徴があります。

 

 

 

オフィス性向の強いエリアの特徴1:平日の通行量が時間帯別に大きく変化する

繁華街などでは、朝から晩まで終日人々の往来があるのに対し、
オフィス性向の強いエリアにおいては、
1日のうちに、人々が道路を往来する時間帯が限られています。

人々の往来は、主に通勤時間帯とランチタイムに集中し、
それ以外の時間帯はほとんど人が歩いていないことがほとんどです。

ランチタイムが終わり、終業時間になるまでの午後の時間は、
「アイドルタイム(無作業時間)」とも呼ばれ、
お店にとっては、その呼び名の通り、
「何もやることがないほどお客さんが来ない」
という時間帯になります。

 

オフィス性向の強いエリアの特徴2:休日の通行量がきわめて少ない

平日の1日の中でも人々の通行量は変化することに加えて、
平日と休日(土日・祝日)でも、目に見えて分かるほどの差が出ます。

極端な地域ですと、平日の10~20%程度にまで落ち、
平日とはまったく違った街の様相になります。

そこまで極端な事例はそれほど多くないものの、
一般的にオフィス性向が強いエリアというと、
平日と休日の繁閑比は、1.5倍~2倍くらいの違いがあります。

 

 

オフィス性向の強いエリアの特徴3:平日の通行人の大多数が会社員

オフィス性向の強いエリアにおいては、
人々の集中度が大きく変化するだけでなく、
そのエリアにいる人々の層も偏っています。

「オフィス」というからには当然なのですが、
基本的には、会社員しかいない状況です。

買い物客は勿論のこと、周辺に住んでいるであろう地元住民も、
きわめて限られる状況です。

そして、会社員がほとんどということは、
街を歩いている人を観察すると、主に20歳代~60歳代がほとんどで、
家族連れや高齢者、主婦や学生などはまったくいません。

 

 

 

オフィス性向の強いエリアの特徴4:平日は男性の比率が高い

いくら女性の社会進出が進んだと言っても、
近くに女性メインの事業所でもない限りは、
一般的なオフィスエリアにおける男性の比率は、
大きいところで、女性に比べて2倍以上になります。

東京都内の主なオフィス性向のエリアの事例をいくつか挙げますと・・・・

男性を「1」とした時、女性の数は、

東京駅近辺で「0.55」
神田駅近辺で「0.5」
秋葉原駅近辺で「0.6」
四ツ谷駅近辺で「0.7」
新宿西口で「0.7」
池袋西口で「0.75」
浜松町・大門近辺で「0.4」
品川駅近辺で「0.5」

といった状況です。

 

 

 

オフィス性向の強いエリアの特徴5:土日・祝祭日は閉店するお店が多い

これは、上記の「特徴2」とも関連することですが・・・・

土日・祝祭日になると、人々の往来が減るとともに、
オープンしているお店も減ります。

駅前および街の中心になるTG近辺のお店以外は、
土日を定休日にしている場合が多く見受けられます。

そして、周辺の店舗が休みになるということは、
「休日には商売にならない」ということを物語っています。

 

 

オフィス街風景03

オフィス性向の強さとリスクの高さの関係

上記に挙げたような5つの特徴、これらが共通して見られるのが、
「オフィス性向の強いエリア」と呼ばれる地域です。

 

 

では・・・・

どうしてオフィス性向が強いと、
失敗するリスクが高い(儲からない)のでしょうか?

 

普通に考えるのであれば・・・・

周辺の就業者が多ければそれだけ需要が多い

ということも言えるはずです。

すなわち、

昼間人口が多い=流入が多い=売れる

という結論になると考えても不思議ではありません。

 

人口(夜間人口)は、どんなに密集していて数の多い地域でも、
500m圏で20,000人程度が最大ですが、

オフィス性向の強いエリアでは、ほとんどの場合、
500m圏で少なくとも20,000~30,000人の就業者がおり、
多い地域では100,000人以上の場合もあります。
(新宿や東京など)

これだけ多くの人々がいれば、それだけ多くの需要が見込めると考えられ、
繁盛店を作りやすいであろうと推測されるのも無理はありません。

 

しかしながら実際は、それはとんでもない誤りであり、
上記のように考えて出店してみたら、
現実は全然売れなかった、という事態になることが多いのです。

 

 

なお、この話をする時に、多くの人が想像する「売れない理由」は、
「休日には人がきわめて少なくなるから」
というものです。

確かに、それは理由の一端ではあります。

平日と休日での繁閑比が非常に大きいため、
「繁華街なら1週間ずっと営業していても集客できるが、
オフィス街だと平日のみの営業となるため、
実質的な営業日が7日→5日に減ってしまうことがリスク」
とする考え方ですね。

このこと自体は、間違いではありません。
これは本当に大きなリスクのひとつです。

 

ただし、これだけでは不十分なのです。

というよりも、
「なぜ休日には平日に比べて人がきわめて少ないのか」
について、しっかり考察する必要があります。

そしてその先に出てくる答えは、

「そこにいる人の大部分が会社員だから」

ということなのです。

 

 

メイン客層が会社員だと儲からない理由

当たり前のことを言っているようですが、
実はここにポイントがあります。

会社員、就業者という客層には、彼らがもたらす、
共通する3つのリスクがあり、
それこそが、儲からない理由に繋がっているのです。

その3つの性質とは、
以下のようなものです。

 

 

 

会社員という客層がもたらすリスク1:毎日同じ人が同じ道を通る

少なくとも通勤者は、基本的には毎日、
同じ道を歩いて通勤します。

日々、違う通勤路を通る、という人は、
私の知る限り、聞いたことがありません。

つまり、オフィス性向の高いエリアにおいては、
「お店の前を往来する人は毎日同じ人」
であるということなのです。

 

それがどういうことかといいますと・・・・

まず、

嫌われたら一貫の終わり

ということです。

毎日そのお店の前を通ったとしても、
自分が好きじゃないお店であれば、
入ろうと思わないのは当然のことですよね。

何かの事情で、お店の前を通っている人たちに1度でも嫌われてしまえば・・・・
明日も明後日も、店前を通るのは同じ人ですから、
挽回することが非常に難しくなります。

別の客層にアプローチしたいと思っても、それが非常に難しくなるのです。

 

さらには、こうした「同じ人」をターゲットにしていると、
もうひとつ問題があります。

それは、「商品が陳腐化してしまう」ということです。

早い話が、商品やサービスの目新しさがなくなり、
同じものを売り続けていると、飽きられてしまうということですね。

となると、常に新しいものを打ち出し続けなければならず、
このことが店舗運営に大きな負担になってしまいます。

 

 

 

会社員という客層がもたらすリスク2:経済的制約が強い

一般的に、会社員の場合、
日常的な生活において、個人的に使えるお金の額は、
そんなに多くはありません。

みな、お金を使いに来ているのではなく、
お金を稼ぎに来ている
わけですので、
財布の紐は、基本的には堅いものです。

余計な物は買わず、特別な飲食はしません。
そういう意味では、
心理的に制約を受けた状況であると言えます。

単に購買単価が低いというだけでなく、
そもそも購買意欲自体があまり無いのです。

繁華街では大繁盛するような、とても料理やサービスの質が良いお店でも、
わざわざ職場の近くで行く気にはなれない(お金を使いたくない)人が多いため、
オフィス性向の高いエリアで失敗してしまう事例は沢山あります。

こうしたネガティブな顧客心理を崩すためには、
経済的なメリット、すなわち「安さ」を、
前面に押し出していく必要があります。

したがって、オフィス性向の高いエリアにおいては、
自ずと価格競争に陥りやすく、成功できるビジネスモデルが限られてきます

 

 

 

会社員という客層がもたらすリスク3:行動範囲が限定される

これは上記の「1」にも関係してくることですが、
基本的に就業者は、決まった道を通って通勤します。

毎日、ほとんど同じ時間に、同じ道を使い、
よほどのことが無い限り、それは変わりません。

また、通勤時のみならず、移動の際はほぼ、
「目的」ありきで移動しています

取引先へ向かう、駅へ向かう、などに加え、
ランチをする際にも、時間が限られているゆえ、
あまり飲食エリアを回遊するということはなく、
どのお店に行くかほぼ決まった状態で、
目的来店する場合が多くなります。

人は、目的を持ってそれに向かって行動している時、
「信号で止まりたくない」
「効率的に歩きたい」
「できるだけ近道したい」

など、行動にも効率性を求めたがります。

したがって、常に最短距離で歩く傾向が強くなり、
これが何を意味するかと言うと、
「動線から外れた場所には行きたくない」
という気持ちが強くなる、ということです。

こうしたことから、オフィス性向の強い地域では、
通勤動線から5m離れるだけでも危険であり、
10m以上離れると売上げにきわめて大打撃

というケースが実際に頻発しています。

 

オフィス街風景04

 

オフィスエリアで成功の道は・・・・

以上のような3つの問題点から、
オフィス性向の強い地域では儲からない、
という現実が引き起こされているのです。

たとえそこに人は多くいたとしても、
その人たちが、「お客さんに成り得る人」でなければ、
商売にとってまったく意味はありません。

 

 

しかしながら・・・・

オフィス街に、ちょっと目新しいビルができると、
その低階層には、飲食店その他のお店が必ずといっていいほど、入ります。

しかし、乱暴な言い方にはなりますが、
そういうものは、多くの場合、失敗すると見ていいでしょう。

それは上記のような商圏の問題もきわめて大きいことに加え、
オフィスビル内の立地は建物構造的にも、
多くのマイナス要因をはらんでいることが多いからです。

であるにも関わらず、多くの人が、
「オフィスエリアは人が沢山いるから繁盛するはず」
という幻想を持っているため、家賃も高い場合が多いのです。

<参考>

 

 

 

オフィス街への出店が、いかにリスクがあるか、
お分かりいただけたでしょうか?

もちろん、絶対に良くない、無理だというわけではありません。

上記のようなリスクをすべて勘案し、しっかりと就業者の心理を突いた、
いわゆる「商圏にマッチした業態」が作れれば、
確かに流入自体は多いわけですから、チャンスは大きいと言えます。

したがって、もしオフィスエリアに出店しようとするのであれば、
「会社員のランチタイムを狙いたい」というような、
軽々しい気持ちで手を出すのではなく
繁華街に出店することの何倍も立地を厳しく見て、
チャレンジするようにしてください。

 

 

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